真冬に百合、白ければいいのに。/佐々宝砂
 
息を吸いこみ、吐き出します。ゆっくり。ゆっくり。
ヨガの行者のように、ゆっくり。ゆっくり。
私の心臓はゆっくりと打ちます。
でも、あなたほどにゆっくりではないのです。
敬愛する博士。

私は甘えることができません、
私は傷ついたとも言うべきでありません、
私を継ぐ人がいないと、
私には先生がいなかったと、
私は言うべきではありません、
ええ、
あなたのことを思えば。

明け方の空にもう初夏の星が見えるかと
窓を開けましたが曇りのようです。

それでも星は空の向こうにある、
あちらにある、
いつも、
いつでも、

真冬の百合が窓辺に揺れます。
白ければいいのに。
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