白梅/佐々宝砂
こぼすだろう
私はあのときと少しもかわりがないのだと
そんなバカげた嘘を言うつもりはない
私は梅の枝よりはるかに流動的なので
五分前の感情を表現することすらできない
でも日々新たに
そのことに気付くと
我ながら心からうんざりするけれど
日々新たに
私は自分の感情を再構築しているらしいのだ
白い花びらは茶色にくすんでゆき
黄色い花芯は稔りを知らぬまま落ちてゆき
かたく閉じた冬芽は
訪れなかった未来を抱きしめて朽ちてゆき
この世にさよならを言えないで
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