なきゆき/ベンジャミン
新雪におおわれた道を歩くと
冷たさに耐えかねたような
声が聞こえる
きゅっ きゅっ
きゅっ きゅっ
粉雪は互いの隙間を埋めながら
その度に小さな声で鳴く
きゅっ きゅっ
きゅっ きゅっ
泣きたいほどの寒さを
奥歯でこらえながら
きっともっと辛い人もいるのだ
この冬に
春をどんなに想っているか知れない
きゅっ きゅっ
きゅっ きゅっ
粉雪が互いの隙間を埋めるように
僕らも
互いの隙間を埋めながら生きている
僕のかわりに鳴いている
新雪が
僕のかわりに鳴いている
この冬に
きっともっと辛い人がいる
新雪が鳴いている
その人のかわりに泣いている
僕は白い息を吐きながら
奥歯で何かをこらえてみせる
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