さよなら/松本 卓也
 
ねぇ―――
僕は随分と必死にやってきた
だから もう 良いよね?

人の善意に乗っかって
積んだ言葉があったとさ
人の悪意に晒されて
摘んだ言葉があったとさ

いつの日か胸に亀裂が走り
セロテープを巻きつけながら
繰り返した自己正当化
もう繕えやしない

いつからか頭を抱えて
袋小路に迷い込んだように
掻き消えた解答達が
毛穴から滲んでいく

押し付けた烙印から
鈍い煙が立ち昇るたびに
僕はひとつずつ意味を無くし

やがて目を背け

ねぇ―――
僕はよく頑張ったはずだよね
だから もう 帰ろう

戻る   Point(0)