ひとり/なるせ
 


ここには音がない



にじんだ瞳で壊した感情
世界が微笑みをやめた日
あなたはそう呟きそして
すこしだけ泣いたのです



なぜです
失うものすら失いました
この手が掴めるすべてのものに
いつか終わりがあることも
空が裂け雲が落ちるときが
そう遠くないことも知っていました

なぜです
なにも救えないことなど
わかっていたはずです

なぜです
あなたがいないのは



届かないことばを並べれば
すこしでも傷は癒えるのかと
群衆のなかで誰かが呟いたのです

こぼれ落ちることばたちは皆
泣いていました



あなたを思い出せずに
壊れてゆきました

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