飛べない翼/ミキ・オキタ
 
あなたを好きと呼ぶことは
抱きしめるふりをしながら
冬越えに飛び立つはずのあなたに
そっと鎖をかけている
あなたはやさしいから
気がついていないふりをしながら
ほどけるはずのその鎖に
ぼくのそばをはなれられない

校庭に描いたつばさを背負って
空を飛んだふりをしてみせてくれるあなた
本物の翼にぼくが気がついて傷つかないように
注意深く隠して

地面から離れていく

冬が来るまえに
行かせなければ
ぼくがあなたにあげられるものはビスケットの断片くらい
抱きしめても
冬を越すほど暖めてあげられない
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