まほろば/maumi
足並み揃えて歩く新兵さんは
どこか物悲しげで
それを見送る白いドレスの女の子は
真っ赤な唇で こう叫ぶのさ
「私の元へ帰ってきて」
カメラを覗いている若者は
小さな硝子越しに見る世界に
涙流しながら時を写し込み
今はその場から血を流して動かない
13歳で子供を産んだママは
自分のママを探していて
渋谷で蠢いている若者は
自分の親さえいらないと言っている
おかしくないか この世界
顔も知らない女の子
僕の彼女と紹介する友達は
指した指が画面だということに
未だに気付かないでいる
幸せを願い若者は信じた
たくさんの命を奪い取る液体
信じる
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