青いカナリヤ/スイレンユキコ
夜の鳴き声に目を覚ます、
右手に残った青いインク
思わず舐めながら
指を折って過ぎた日々を数える
ラジオが壊れたみたいに
あなた突然喋らなくなった
蒼ざめた満月に祈りを込めて
この恋心を欺くために
精一杯の嘘をついた
夜だから、という理由だけで
裸になって眼を閉じた
シーツをかきむしりながら
夜の鳴き声を聴いていた
はじめは
優しく髪を撫でていた手が
どうしようもなく乱暴になっていくのを
夜のカナリヤは見ていたのだろう
またたく星の数だけ
苦しみ泣き明かす羽目になることを
夜のカナリヤは知っていたのだろう
電話のコードの向う側には
暗い森の木にとまった鳥が
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