散華/LUKE
それは
きまぐれに振り返ることだけが
密やかな悦楽
鉢に立てられた白い墓標に
いまだ記せない二文字のひらがな
ジカクの多すぎた一語の漢字も
追憶の風の中にだけその香は芳し
いずれ
それらしき名を見つけ
人目に飾れば
そしらぬ顔していた神々のしもべが
猜疑心と嫉妬心の忠実な下僕が
その葉を弄び
繊毛のよう細やかに震える
偽りを暴く
そうして処刑されたドライフラワーの一束が
クキを吊られて今日もユラユラとユラユラと
やがて
標本の中ピンで留められ硬直した
トンボの羽のように乾いた花びらが
あの誇り高き棘さえも失い
カサカサとカサカサと風に擦れては鳴き
魔法使いの老婆の声で
オレを誘惑する
せめてその掌にむすばれ
砕け散りたいのだと
そこには
花の中で迷ってしまった
一匹の若いミツバチの亡骸が
青白く鋭く尖らせたままの毒針を
この掌に突き立てる日を夢みて
今も眠っている
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