ノート(40Y.1・22)/木立 悟
 


先が見えない曲がり角の向こうから
雨が来るのか
雪が来るのか
鳥たちが恐れ 飛び去る音
叫びひらくけだものの口に咲く灰花



曲がり角に立つ家が
空を大きく切り裂いてゆく
海を見つめ過ぎた標識が
こぼれ連なる車の光に
錆びついた碧の目を向ける



雪は川より速く飛び交い
けして水面には映らない
風を撲ちつづける灰の帯
うねり唸るけだものの声
空をゆく一匹の深海魚の下
道を蹴り町を蹴り ひとり
誰の目にも映らぬように駆けてゆく




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