熱海/石畑由紀子
 
らドカドカとやってくる者たちをその酬われない涙で癒すはめになるのだ
やれ神経痛だの関節痛だの五十肩だのうちみだの
疲労回復だのストレス発散だの家族サービスだの不倫旅行だの

嗚呼、泣けてきた

平塚駅に着くころにはすっかり湯あたりしてしまって
見知らぬ何人かと一緒に浴場を逃れ降りたつと
恋人が改札口で満面の笑みで待っていてくれたから
私は一気にじゅんと溢れてしまい
あたり一面は熱い海と化した








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(※ 本文四行目部分
  『文字書きさんに100のお題』no.057を参照のこと
   http://signf.ave2.jp/100tex/frame_ss.htm )

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