猫/スイレンユキコ
 
髪をきりおとせ、まず
他に切れるものはないか

君のオフィスルームへと続く階段を
裸足で
そっとそっとかけのぼった
意思など無い関係性だった

欲望を羽のように飾り立て
目をきつく閉じさえすれば
平気だった
たとえ
何も生じないことを知っていても

少女とも処女とも違う
この身体が
捕らえられた弱者の如く
震えて
放して放して放してと言いながら
離れることなんて出来なかった

愛も情もない冷徹な君の
指先がすべてで
すべてを捧げて
あたしは猫にすら成り下がる
きっと

固くて白い階段の途中で
足を止め
眠り込む
ふりをして考え込んでいる
拒絶して下さる誠意があれば
せめて

髪をきりおとせ、まず
他に切れるものは無いから、
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