頌春歌/恋月 ぴの
初春のみずうみに映る景色を
刻々と塗り替えて
青かったり
赤かったりする
目一杯に膨らませた
君の頬を指先で弾けば
凍えた朝の軒先に
透き通った氷柱を見つけ
曖昧な気配の裾を払うように
冷たい空気が忍び寄り
いつの間にか辺りの景色を支配する
氷柱に感じる儚さは
小春日和の眼差しに身を震わせ
雫となったふたりの想いは
合わせ鏡の幻よ
恋は ルルルルル
春は来たりし
麝香の香りに差し入れた掌を
やんわりと逸らすように
かきあげた後れ毛
匂い立つ小春日和の眼差しは
戯れの予感と釣瓶落としの峠に発つ
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