翼人の子サフィ/イオ
ました。
どうして私は私なの、どうして翼のない私なの。
そのときでした。
サフィはふわり、と風を感じました。
さっきまで風はなかったのに、と驚いて身体を起こすと
風は少し強くなり、湖面をざあーっとなでました。
水面が美しく波立ち、花々が揺れたので、
あたり一面甘いかおりに包まれました。
「きれい」とサフィがつぶやくと、
風は弱くなり、
ふわりとサフィの頬をなでておさまりました。
「兄さんがここじゃ木が多いから風は吹かないと
言っていたのに・・・」
サフィは嬉しくなりました。
この美しい一瞬を見たのはサフィ以外にはいないでしょう。
誰も知らない秘密の宝物をもらった気
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