鳥と水/木立 悟
黒い林
黒い道
雨のくちびる
雨のうなじ
ひかり 流れ
ひかり 流れて
黒い衣
黒い鳥
探し疲れたむらさきの花
足首に咲くむらさきの花
水の上を
雪をのせた葉がすべり
海 池 川 湖
水たまりのなか頬を寄せあう
陽のゆらぎの鳥がいて
すぐに見えなくなってしまい
めまいと曇を結ぶかたちが
はばたきの輪に残される
空が幾つか入れ替わり
境いめの青は薄くなり
やがて灰にもりあがり
午後の肌に消えてゆく
水たまりの上に浮かぶ輪が
光にほぐれ 水紋になり
水の諸相をたどりながら
うたのように沈みひろがる
枯葉も枝も雪も幹も
枝と枝の狭間の空も
みんな鳥の姿をして
ほんとうの鳥を待ちつづけている
むらさきの花を待ちつづけている
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