名作は天然である/岡部淳太郎
 
 いきなり断言してしまうが、名作とは天然である。隅から隅まで計算しつくして書かれたものは、実は名作の名に値しない。何だか自分でも辟易するほど古典的な考え方でいやだなと思うのだが、いろいろ考えていくと、結局そこにたどりつかざるを得ない。名作とは、考え出してつくり出すものではなく、天然温泉のように、ぽっと沸いて出て来るものである。または、空から降って来ると言ってもいい。
 しかし、いつもそんなふうに沸いて出たり降って来たりするものでもない。そのような瞬間はごく稀である。だからこそ、名作は名作なのだ。世の中で書かれる詩がどれもこれも名作だらけなんてことは、確率的に言ってもあり得ないし、推敲を重ねれば必
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