死への苦痛を取り去る方法/麻草郁
、君はよく知っている。今君が見ているこの言葉、これらは手を加えられなければ変わることなく、君が見ていないからといって前や後ろに動くこともない。
僕たちは、キーボードを打つたびに死んでいる。
僕たちの脳に浮かんだ言葉は、打鍵されるたび、僕たちの感覚から切り離される。つまり、僕たちは言葉を生み、そして殺しているのだ。君から生まれた言葉の死骸が、いつか宙をただよい僕のもとへとたどりつくかもしれない。僕の言葉が君にたどりついたように。
これから君が人生の中で出会う言葉たちは、数百年前に死んだものかもしれず、昨日死んだものかもしれない。けれどその言葉たちが君の脳にたどりついたとき、それらは君の血肉になるだろう。そして言葉だけが生き続ける。
死が恐ろしいのならば、言葉を書き遺せばいい、変わり続ける生の中で、死を刻印し続ければいい。君を脅し続けるもの、虚偽の理想、それらを打ち倒し、苦痛を取りさる方法は、言葉の中に必ず見つかるはずだ。
戻る 編 削 Point(2)