鈴と光/木立 悟
放射の水から逃れられずに
どこにもいけない固形の光
円を描いてただぐるぐると
水源の真下を回りつづける
蒼い蒼い路地裏を
過去が近づいてきては去り
小さな歩幅の足跡たちは
飛び立つように途切れてゆく
誰も住まなくなった街は
陽の色の鈴でできていて
風にひらいた窓から戸から
音のかたちは通りへあふれる
枯木は道
道は鳥
鳥は雪
雪は空
空に向かい 重なるものが
すべて羽になるころに
鳥は帰り
ひとり眠る
寄り添う氷が寄り添うままに
互いのままに溶けてゆき
ふたたび凍るそのふちどりに
めぐる空を映してゆく
やがて水が涸れたとき
光は音を放ちながら
降る羽のなか消えかけながら
静かに静かに微笑んでいる
見つめていてもわからないほど
壁の鏡は小さく揺れて
どこからか来る鳥の吐息と
鈴と光を聴きつづけている
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