坂の上の、店にて/日雇いくん◆hiyatQ6h0c
 
お待ちどう!」
「おっ、今日もうまそうだ」
 品は、見た目にはなんて事はない、ごく普通のカレーだ。しかし、独特の香ばしい匂いが、食欲を強くかき立てる。
 早速口にすると、なつかしい味がする。
 お袋の作ってくれた、あの、カレーの味が。
 小麦粉とラードが多めに入った、こってりとしたルー。それによくからんだ、分厚い豚バラ肉。そして、不器用に乱切りされた、程よい硬さに煮えた根菜類。故郷から離れて暮らしている者として、子どもの頃から馴染んでいる、忘れられない、その味。
 一気に平らげると、つい声をあげた。
「ごちそうさん。お冷や!」
 またタバコに火をつけると、しばし、至福の時をたゆたう
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