冬休み/松本 卓也
 
12月の夕暮れに注ぐ
眩しいだけの陽光が
白壁に弾かれて
僕の目に付き刺さる

自然に流れる涙には
何の感情も込もってない
急いでいる訳じゃなく
探している訳じゃなく

道の端にうずくまる黒猫に
思わず声をかけてみると
気だるそうに首をもたげ
視線も向けずに再び眠る

表情に出さない苦笑と共に
ポケットに手を突っ込んで
人波の中に立ち尽くし
誰とも視線を合わせないまま

太陽は雲に覆われながらも
数多の中に立ち尽くす僕に向け
一筋の光を投げかける

なんてそんな事
ある訳もなく

仕事が無いだけの平日は
別段の休息を与える訳でもなく
小さく身震いする肩に
日常を積み重ねていくだけ

無様に祈るつもりも無い
不相応に願う余裕も無い
だけどほんの少しだけ
来る年に安らぎを信じさせて
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