青き月/中音 涼
 
誰もいなくなった夜の海岸
音も無く波がよせている漆黒の海
遠く拡がる水平線のその上より青く輝く月が見ていた
ただ独り旅に出てきた私に
彼女の光は、なんと優しかったことだろう
何処までも何処までも柔らかく
こころを慰めてくれた
私はじっといつまでも彼女を見詰め合っていた
私のこころは永き時空へと導かれていった
この月に見守られている
多くの時代の旅人の姿が多くの国の旅人の姿が
私の心の中を行き交った
月よ、貴方は何万年もの間
数え切れないほどの人々を
その眼差しで慰めてきたであろう
その御手で抱擁してきたのだろう
私はこの慈母観音に手を合わせた
そして誓った
ここから強く歩み始めると
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