山/葉leaf
 
の指を摘み取ってゆくのだろうか死人だろうか僧侶だろうかそれとも奴婢だろうか、僕は道に沿ってながれてゆくいくつものつめたい手に背を押されながら空を切る手の鳴き声を聞いた、僕は幽石をさがして体内をめぐるが膿んだ膵臓の中に血を吹く雷紋を見ただけだった、僕はやましい星火だった、空が一枚の燃える布であり地球が一滴のこごえる露であるとしたら僕は大気を「原形質」と呼べるだろうか、もはや落ちてくるつぼみはなく倒れてくる光波もない対流する霧の中に僕の記憶はひろがった、知覚は点滅した、羊歯の葉に秘められたささやかな毒が霧分子にさらわれてゆくので僕の眼は毒を乱反射してゆく、ヒトデは青虫を欲望するだろうか抽象的な奴婢は潅木に編入するだろうか雷紋はやましい文字として西風の中で墜落するだろうか、僕は静まった過去の上澄みに砕けた幽石を見たがそこへ至る空間は抜け落ちていて僕は水のない海だ、ふと辺りを見回すと朽葉色の街並みが大地へとめりこんでいる、僕ははじめから街の中にいたのだ。
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