声を聴かせて/塔野夏子
 
声を聴かせて
おのずから妙なる旋律を宿すその声を

流れがうまれる
その声が意識に触れた場所から
涼やかにゆるやかに
深くたゆたう流れがうまれる
私はその流れに
身をゆだね
漂う

目を閉じれば
流れがくりひろげる景色が見える
右岸ではなつかしさがささやき
左岸では予感がさざめく
それらがやわらかくまじりあうのを
深々と感じながら
私は何処までも心地よく運ばれてゆく

見あげる空には
幾重にも波紋をひろげる憧れを戴きながら

声を聴かせて
おのずから妙なる旋律を宿すその声を
私はその流れに
身をゆだね
漂う
漂う





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