傷痕/恋月 ぴの
振り解こうとしたその腕の力に
恐れ戦き
声にならぬ悲鳴を上げ
逃げ出そうにも逃げ出せず
生き抜く事は人の本懐であるとしても
手当たり次第しがみ付く執着心は
どうしてこうも醜いのか
潔く生きれば良い
たとえ孤独であっても
風雪に耐えれば良い
無言のまま立ち尽くす白樫の如く
総ては叶わぬままに
もがきながら
暗い沼の底から伸びる一本の白い腕
おいでおいでと呼んでいるのか
立ち枯れの葦原はざわめき
一本の白い腕に浮き出る血脈は
避けられぬ末路を辿る外塔婆となる
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