薔薇/渦巻二三五
一束の薔薇を奪ひし通り魔の手にぎちぎちと青き棘立つ
花を剪るしあわせな朝よそおひて茨に髪をからめとられつ
「ともしび」と「かなしみ」似たり真夜中の明るき窓の下に黄の薔薇
にくしみを誘ふ白薔薇たつぷりと咲かせてはまた甘きはつなつ
触れるほど近づきてなほためらひて飛び去りし蜂白き薔薇より
逢ひたしとおもふひとあり逢ふつもりなくてななつの薔薇を贈らむ
幼くて父なきが「孤」老ひて子のなきが「独」とふこと読みてより漆黒の薔薇の実を欲る
白薔薇の花弁に鋏くれながら目をふせるべき我をこぼしつ
去年の枝今年の枝とたどる指知らず知らずに棘を避けをり
ゆるされて花びら落とす白き薔薇 重ね重ねのたおやかな罪
二〇〇〇年五月 @nifty現代詩フォーラム
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