赤いヘッドフォン/大小島
 
目の前に数時間前からころがっている
赤いヘッドフォンがある。ちいさなヘッドフォン。
僕は見るともなく、それを見ている。実は
見ていないふりをして、実は、そればっかり、気になってしょうがない。
だって、その赤いヘッドフォンは僕のじゃないから。

今日は朝、目が覚めていつもの変らない一日がはじまった。
僕は布団をなんとか抜け出して
水道をひねって水を一杯飲んだ。
そうして見つけたんだ、その真っ赤なヘッドフォン。
どうして、そんなものここにあるんだろう。
僕がそれをみつけて、最初にとった行動は、
何気なく、部屋のすみによせることだった。
決して不審がったりせずに。
どうして?
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