エアーカーに乗って/けんご
 
ひと昔前
電子の森ですれ違った人がいる
早くにお母さまを亡くされ
病弱な彼は
小さな町で古本屋を営んでいた

古いエレクトーンの音を聴いていると
彼の一句が思い起こされてきて
切なくなる

「僕のお母さんが
 エアーカーに乗って
 空から
 僕に会いにきてくれる」

お母さん
夜の沈黙の中
エアーカーの明かりを灯し
息子さんに会いに行ってください
優しい 優しい お母さん

息子さんがお待ちかねですよ


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