春の旋律/銀猫
 
愛しいと綴らぬ代わり
速達で、と告げましょう

思い煩うこころに替えて
所在の分からぬ神様に
祈りましょう


微かに雪の匂いのする声は
幸福の理由に充分すぎて
零れる音色が
深いところに染みてゆく


銀色の板に刻まれた
これが
きみの声


結露した磨り硝子と
ストーブの陽炎が
背中に続いている
そんな温もり


漆黒の音符には
希望を隠しているでしょう?

Aマイナーの思惑は
舞い上がる羽根をなだめるコード進行

きみの奏でる愛の歌は
吹雪に萌えて
春を咲かせる


ありがとうの台詞は
速達にて

逸る想いは
タンポポの綿毛に乗せて

きっとお伝え致します



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