冬木立/umineko
 
それはまだ僕が
生きることは正しいことと
信じていた頃のお話

彼女が
言いにくそうに僕に言う
あのね
いろんな人が
見えたりするんだ

ここにいない人

あんまりね
意識を澄ませると
見えちゃうからぼんやりしてる

夜勤の時、さ
廊下に
座ってるの
みんな

私の知らない
顔ばかりだから
たぶん
ずっと前から
そこにいるとは思うんだけどさ

私は
つまずかないように
忍び足で歩くんだ

それとさ、
山下クンの
背中にね
おばあちゃんがいるの

へ?
それは彼に言ったの?

ううん
でも
彼って実家お寺でしょ?

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