森/馬場 こういち
針葉の青に誘われて わたしが森に這入ると
ここにも あそこにも 木が立っていて
空からくる陽を 受けとるために
木々は あちらこちらに 枝を伸ばして
地面に影を落としていた
一本の木が
わたしの往く手に現れて
枝の先の無数の葉は
微かな風に 揺られていた
この木がわたしを呼んだのか?
わたしがこの木を求めたのか?
声を持たず 語ることもなく
感情を出さず 表情を変えず
大地に深く根を下ろして
じっと立っている
ただその場に立っている
土の中の根毛の先から 枝葉の先にまで
ひとつの希望
生きるという目的で つながっている
そのとき わたしは 木だった
木はわたしだったのだ
森はわたしたちなのだ
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