35℃/AKiHiCo
 
萎れた表情に映る月
突風で乱れる長い髪は
以前は誰もが憧れる程煌いて
キミの眼には今
何が見えているのか

凍った夜空に溶けてしまいそうで
僕がキミを抱き締めれば
抗う事なく弧を描く様に撓る体躯
翻るドレスの裾の波
長い睫に刺さった星屑がきらきらと
涙のように頬を伝い地面へ

可哀想な程に華麗で
花弁が散りゆく瞬間の
キミと悲しみを分かち合う奏鳴曲
細い指先には光る人工の羽根
首元で輝くのは過去の栄光

蒼白い肌に透ける月灯り
真紅の唇が微かに訴える声
僕はそれを聞き取れずに

あの日
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