若葉の行方/千月 話子
 
 
 降り始めた雪に濡れながら
 翔る若葉よ
 じゃれて 絡まり
 互いに触れた体の温もりを
 互いの手の平に感じただろう
 彼等は 彼等は

 何処へ行ったのだろう



 
 足先から瑞々しさがやって来て
 紅潮した頬に前髪の滴り
 横顔が愛しいと 
 笑っていた





 赤い傘の固まり
 青い傘の偏り を
 軽く避けて
 信号が点滅する速度で
 消えて行った
 いつしか霧雨に変わる
 白く霞んだ銀幕へ





 写し取った情景に声は無く
 唇を読み取る術も無い
 可視だけが ただ美しく
 四角 彩る 





 消え去っては 誰にも
 もう 弄ぶことも出来ず
 空白を埋めるまで
 閉じ込めておく
 鍵付きのオルゴヲル
 突起の音階へ




 (春よ 春よ
 雪解けて
 押し開く
 若葉の弾み
 数センチ背高になり
 数センチ心揺れる)

 箱の中で
 歌ってる




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