風雪の帰り道/松本 卓也
雨雪が相争う強風の中
いつしか雪が雨を駆逐し
束の間に風景を変貌させていく
滅多に締める事など無い
ジャケットのボタンを閉じると
吐息さえ掻き消す寒風に抗おうと
出来るだけ前を見ないようにする
いつも以上に人影の無い
寂れた商店街を横断する間にも
水混じりのアスファルトに
枯葉と雪の奇怪な模様が刻まれて
自宅まで数百メートルの道程で
悴む指が鍵を取り落とすこと数回
埋もれかけた金属が誘い出す
内なる声が風に混じるのを聞いた
期待を込めた自問
現実を告げる自答
拾い上げながら噴き出した自嘲は
舞い散る粉を溶かしながら
吹雪の合間を突き抜けて
視界の向こうで弾けて消えた
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