「空白乗車券」/服部 剛
チンコ玉の中の一人である僕も
乗車券を差し込んで自動改札を通過する
構内を僕は走り抜ける
動く歩道に乗る人々を追い抜いて
柱に貼られたポスターの
「Stand Up!〜駄目な奴だと言われても〜」
という映画タイトルを横目に
発車時刻の迫(せま)る駅のホームへ
( 運命の列車は忘れた頃にやって来る
( 乗り遅れてはならない
( 我を忘れて走る時
( ポケットに入れた行先の記されていない
( 真っ白な乗車券は
( 人知れず光を縁取(ふちど)り始める
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