世界の別名/岡部淳太郎
 
まえの世界である限り
  世界は決して秘密を明かすことはない

それぞれの世界がそれぞれのひとりに向けて
自らの名を告げる
そのかすかなずれの 断層の中で
ぬけ落ちた羽毛を掃き集めて溝の中に捨ててゆく
可哀相な妹は人に知られないまま
最後の息を白く染めていた
あなたはただひとつの世界だった
私がただひとつの
変りようのない世界であるのと
同じく



(二〇〇五年十一〜十二月)
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