午後と彩水/木立 悟
水に姿と色を浮かべ
二枚の白い布をひたして
染まるもの染まらぬもの
ただそのままを見つめている
渇いた指で手のひらに
水がほしいと幾度も書くとき
空をまわりつづける葉は止まり
青い鱗の音を降らせる
原と街の接するところ
手からこぼれた水色の毬
追いかける子らの足音が
草の波を梳いてゆく
日陰でほどかれる秘密があり
いつまでも濡れつづく影になり
水たまりを数える指を迷わせ
午後の日向の道を曲がる
草の手のひらに運ばれる毬
窓の奥の小さなしあわせ
陽を欠いたまま夕暮れは来て
誰もいない道にかがやく水
幾つもの世界の軋轢が
雪になり いるはずのない鳥になり
互いを呼び合う幽かな声を
白く枯れ木に遊ばせている
たくさんのただしさ
たくさんのむなしさ
色は混じることはない
水は強いることはない
青のかけら 陽のかけら
水たまりに子らに降り来る日
色はひとつの無数をさまよい
水はふたつの無限をさまよう
戻る 編 削 Point(4)