見舞ったあとに/ナオ
やせ細る少女を思い涙する
骨折は思いのほか傷を残し
温度差に涙して
闘争する心に触手を伸ばせず
仮想の砦に
立ち尽くすのみ
廊下のタイルの光目に痛く
見舞ったあとに
「大丈夫だよ」
雨の中あなたをおいて
救急車も呼ばなかった
振り返りもしなかった
あの男をもっと
恨んでもいいはずのあなた
「そとの流れは
まだ私には早すぎるの」
封印するだけの時間は
現実とのバランスに
崩れることはなく
まだそとには出られない
事件に無邪気すぎたあなた
言えなかった言葉
やはり押し込める
言葉はひどく役に立たない
私はどこに
怒りをぶつければいい
見舞ったあとに
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