津軽/遊羽
 
  津軽を旅したのは
  何年もの前の夏のことでした
  闇の中 車を走らせて
  道路が終わる場所まで
  行ってみたかった
  津軽を旅したのは
  それが最後だったかも知れない
  津軽が恋しくならないのは
  他の季節を知らないから
  他の道を忘れたから
  津軽の思い出は
  他になかなか出てこないけれど
  闇の中 次の町が近づく気配に
  半分慣れすぎた感情と
  半分ごまかされた恥ずかしさと
  他の場所では感じられない
  あれやこれやを感じながら
  やっぱり闇の森の中を
  どこまでも走りました
  車のエンジンと風の音
  冷たかっ
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