古びた便箋の青い文字/たりぽん(大理 奔)
君からもらった
たった一通の封筒は
古びて黄色く灼けてしまいました
その中に大切に抱かれた
数枚の便箋も
古びて黄色く灼けてしまいました
今にも崩れそうな酸性紙の上
ボールペンの青い文字は
それでも薄れてはいないのです
いつか便箋が失われたとしても
文字だけが掌に残り
耳に当てると声になって
よみがえるじゃないですか
こんなにも言葉は強いじゃないですか
伝えること、残っていくこと
いつだって歴史は文字
だったじゃないですか
古びて黄色く灼けた贈り物が
恋や傷が本当だったと
想いを薄れさせないのです
嘘のない言葉の強さを
信じられないのは
冷たく寒い、業のような弱さなのです
君からもらった
初めてで最後の言葉を
信じられなくなったとき
私は古びて黄色く灼けてしまい
言葉だけが残るのです
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