「 皮を脱ぐ。 」/PULL.
を込め、
あの喉を想う。
はじまった。
隣の部屋で声がした。
白蛇は哭くのだ。
きりきりと、
身を捩り。
己の皮から、
抜け出ながら、
天鵞絨の声で、
白蛇は哭くのだ。
キッチンの冷蔵庫から、
ワインを出して、
開けた。
それは赤い。
彼の目のよりも、
彼の血管よりも、
硝子の中のそれは、
なお赫い。
なのに、
また声がした。
彼がすべてを脱ぎ終わり、
いつもみたいに姿を現した時。
わたしはいつもの、
わたしでいられるだろうか?。
硝子の向こうで、
いくつものわたしが、
いつもの顔で、
こちらを見ている。
この夜は長くなりそうだ。
戻る 編 削 Point(16)