君の中で思う/松本 卓也
酷く薄暗い部屋の中
退屈しのぎに抱きあって
見つめ合う儚げな視線が映す
明日とか言う流れの先に
僕達は二人でいられるかな
重ねた悲しみを互いに背負って
形の無い幸福を夢見ても
掌に伝わる体温だけは
温もりを伝えていて
いつまで一緒に居られるのかな
隣の君に告げる事もなく
不安はやがて染み出して
頬をはらりと流れ行く
冷たい指が頬をなぞる
泣き出しそうな顔を近づけ
君は無理に笑ってみせる
照らされた肌の色は
ただひたすらに白く霞んで
ねぇ 二人の未来なんて
僕達でさえ分からないのに―――
言いかけた唇を塞ぎ
無造作に絡めた舌
唾液に伝わる温もりが
心をふっと溶かしていって
今 君の中にいるという
この事実だけを抱き締めて
今 君の中で果てる
この事実だけを慰めに
【2005/3/22 筆】
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