あ行三昧/なな子
 
わたしはこれから あなたに
あ行の言葉ばかり伝えようかと思います
ひどいことを言ったわたしに
あなたは 笑いながら電話をくれましたね

遠いところにいるあなただからこそ
わたしは、少しでも美しい言葉を届けたい
こんな寒い夜の下に
細い電波を求めて飛び出してくれたあなたに
息を凍らせているあなたに 

「あ」




「あ」   …とう

「あ」   …るよ

「あ」   …いよ

「あ」   …。



言い切れない、たくさんのあ行を抱えて

あしたも

あなたが

あかるいひざしのなかで

あたたかいくうきのなかで

あるきつづけられますよう

あたしはいのります。
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