60's Tip/HARD
あれはもう60年代が終わりを告げようとしていたあるホテルだ
ウイスキーは匂いだけのままあたりをうろうろし
クリスマスツリーのてっぺんの星は胴体を切り取られたように見えない血を流していた
アジア系の禿た老人の荷物を運んだ
日本人かと思って彼の口の開くのを待ったがついぞ開かれなかった
部屋に到着して 当然 チップを待った
彼は首を傾げた
少々嫌ではあったが手を軽く差し伸べた
僕の掌にポンと置かれた物は
コインじゃなかった
乾電池2本とクリップだった
乾電池 クリップ 乾電池 クリップ 乾電池 クリップ 乾電池 クリップ
2本の乾電
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