ホーリーナイト/りっと(里都 潤弥)
そばに居て二つの顔と二つの手そのうち一つが濡れている人
夕方の始まる前の炊飯器に一年分の水を入れます
雨の降るクリスマスにはざらざらの舌で植木を乾かしましょう
神様の不公平な日の耳元に山田の歌が佐藤の歌が
ピアノの黒鍵に必要な音を重なるだけで聞くクリスマス
植菌で光れ針金青白く冷えた子供が温もるように
大切な昼間に犬が吼えるから出前とろうよホーリーナイト
靴の上に履いてる靴の隙間にはお湯を沸かさぬ人がいました
君の舌の上に幾度の一日の闇が重なり明けない夜に
コロッケを3分の1床に落とす何事もない短歌だけの日
戻る 編 削 Point(2)