Aurora/※
夜半、雲ひとつ見当たらない晴れ渡った帳の中
一切の音は、等しく大気に閉じ込められる 張り付めた世界
耳鳴りはサンタクロースの口笛、トナカイも蹄を地に固めたまま
空が、降りてくる
あれは、黒キツネの尻尾が舞い上げた粉雪なんだ、と
つぶやくハッキネンさんの吐息混じりの笑みは、どこか誇らしげで
黄色いカーテンの、ゆらめき波打つ様は
幼少の頃に見た、海中に射し込む光の束にも似て
どれだけの時間が過ぎたのだろう、ゆらゆらと ゆらゆらと
見上げる目線は極寒の空に遊離して、肉体を放棄する
秒針さえも凍り付いた空間 ここには永遠が、確かに存在していた
帰ろ
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