月と糸/
なな子
どうしてもあれが
こちらの世界のものとはおもえないのです
紅、青、紫の
うすくたなびくその空間に
りぃんと、糸のような月が吊られているのを見たんです
月の糸で結ばれた一番星が
そっと彼女に寄り添っていました
ああ きっと雲の上では
車のクラクションも 人の叫び声も
ぜんぶ鈴の音に聞こえるのでしょうね
白い糸のお月様は、空にできた小さなほころびのようです。
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