月と糸/なな子
 
どうしてもあれが
こちらの世界のものとはおもえないのです
紅、青、紫の
うすくたなびくその空間に
りぃんと、糸のような月が吊られているのを見たんです

月の糸で結ばれた一番星が
そっと彼女に寄り添っていました
ああ きっと雲の上では
車のクラクションも 人の叫び声も
ぜんぶ鈴の音に聞こえるのでしょうね

白い糸のお月様は、空にできた小さなほころびのようです。
戻る   Point(1)