小説2/加藤泰清
 
「俺の生まれできた意味はどの本読んでも載ってながった」
 途端に息ができなくなった。苦しい。無理に息を吐き出そうとして、アバラ骨が軋む音が聞こえた。空気を吸う事もできない。呼吸の仕方を忘れてしまった。どうしてしまったんだろう。
「見つかるかな?」
 呼吸の隙間から出たあんまり情けない自分の声がとても冷徹に感じた。
「大丈夫じゃない? ほら、映画観にいこ」
 美穂子は全く普段と変わらない調子だ。美穂子は無理矢理俺を着替えさせ、無理矢理俺の手を引っ張って玄関の扉を開けた。同時に落ち葉の混ざった風が勢いよく家の中へ入り込んできた。ひゃ、と短い悲鳴をあげて美穂子は扉を閉めた。
「うっわ、すっご
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