「片耳のうた」/キキ
眠り明け
耳鳴り低く響くので
夢のはしから余白を殺す
しゃらしゃらと林檎をむいてゆくひとの
まつげは綺羅とひかる音楽
唐突に遠さを知った花の色、あれは残響怖くないもの
センセイの鞄かかえてとびのった
とおくなるえき、とおくなるひと
SFのごっこ遊びに飽きてなお新しい星
発見したい
むしられる前のつぼみに似たひとの、首をしずかに傾けるさま
段々と近づくのかな淡々と
はる、きみ、くしゃみ、はな、ねこ、ひかり
片耳に落とした声と、ささくれと千切って飛ばす明るい方へ
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