ネリリしたりハララしたり/佐々宝砂
いと前のベストセラー小説の話もどうでもいい。芥川賞をとった二人の少女の話もどうでもいい。火星の人類学者はいま誰の背中も蹴りたくないし、身体に穴をあける話も読みたくはない。火星の人類学者は人間にほぼ無関係なものを読みたい、人間界とほぼ無関係なものを書きたいと思っている。いま火星の人類学者に必要なのはそういうものだし、火星の人類学者はそういうものが好きだ。
自分に必要なものが何か見極めたい。火星の人類学者はここんとこ三年ばかり、自分ではなく人類に何が必要かそればっかり考えてずいぶん消耗してしまった。そろそろ自分のためだけに星を見よう、自分の大好きなもののために生きよう、と火星の人類学者はこころに
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)