ネリリしたりハララしたり/佐々宝砂
しかけない。
火星の人類学者が話しかけるのはまわりにいる有象無象だ。その有象無象はいろんなタイプの人間で、いろんなことをしゃべったりいろんなことをしたり泣いたり怒ったり笑ったり愛したり憎んだりしている。火星の人類学者は一生懸命それを観察する。でも、火星の人類学者は、今夜はもう疲れてしまって人類の観察ができない。できなくなっているけれど、今夜の火星の人類学者は恋しいしさみしい。愛してほしいのではなくて、なにかしゃべりかけてほしいのではなくて、でも恋しいしさみしい。
ネリリしたい、ハララしたい、あなたと、でも、あなたっていったい誰だったのだろうと、火星の人類学者は自問する。名前はわかってる、実在の人物だってことも知ってる、でも。ネリリしたい、ハララしたい、
ああ、わかった。火星の人類学者はやっと微笑む。あなたは「 」だね。一緒にネリリしよう、ハララしよう、
私はあなたを「くわあとる」してる。
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